クリスマスケーキと
ビスケットに宿る、古の信仰
アルザス地方でクリスマスに食べられるクッキー「ブレデレ」。星、ハート、三角、三日月といった鋭い形をしたそのビスケットには、何千年も前からの歴史と信仰が息づいています。宗教人類学を専門とする祭りの歴史家ナディーヌ・クレタン氏の著書『Fêtes de la table et traditions alimentaires』(Le Pérégrinateur éditeur)をもとに、その秘密をたどってみましょう。
鋭いビスケットが、邪気を払う
クレタン氏によれば、こうした鋭い形のビスケットは「幸運をもたらす」と信じられてきました。とがった形や角は「魔術に対して使われる」ものとされ、クリスマスの時期にはツリーに吊るされたり、鉄製の箱に詰められたりして楽しまれます。特に一年で最も夜が長い冬至の頃、夜に潜む悪霊を遠ざけるための縁起物として大切にされてきたのです。
聖ニコラスの日に配られる、人の形をしたビスケット「マネル(Mannele)」もそのひとつ。夜や闇への根源的な恐れを映し出すこの存在は、死後の世界を象徴するヨーロッパ各地に伝わる古い題材を、キリスト教の文脈に取り込んだものだとされています。
りんごと松ぼっくりが語る、豊穣の願い
モミの木そのものも、その鋭さゆえに魔除けとされ、球果は豊穣の象徴とされてきました。将来の収穫や家畜の繁殖力を願った農民たちにとって、最初のアルザスのモミの木は、豊穣の象徴であるりんごや木の実で飾られていたといいます。ビスケットやパン、ケーキもまた、種が芽吹く様子を映した、豊穣と幸運を願うお守りだったのです。
聖ニコラスの日
聖ニコラスの日は12月6日(前日の5日の場合も)、フランス北部・東部をはじめ、ベルギー、ルクセンブルク、オランダ、ドイツ、スイス、オーストリアの一部で祝われています。伝統的にロバに乗った聖ニコラスが、マネルやシュパンティクラースマンラ、スペキュロス、クーク、マジパンなどのお菓子を子どもたちに配って回ります。
